はじめに

 相続税は,所得税や住民税のように他の事業者や国が自動的に徴収してくれるわけではありません。納税者が自ら税務署へ相続財産の申告を行い,自ら納付する必要があります。これを申告税といいます。
 もっとも,納税者が税理士などの税務の専門家に頼まずに、自分で申告や納付を行うことは,現実的には困難です。被相続人が不動産や金融商品などを多く保有する場合はもちろん,一般的に相続税申告を行う際には,税務申告の実務上の作法や,幅広い範囲の細やかな法令や通達についての知識を必要とします。そのため,税務の専門家である税理士を頼る必要があります。
 もっとも,全ての税理士が広範囲の知識と経験をもっているわけではありません。税理士が,誤った税務申告を行い,のちに数々の紛争が生じていることも事実です。
 本サイトでは,近年増加傾向にある対税理士損害賠償請求に焦点を当て,解説を行っております。相続税の申告でお困りの方は,三橋総合法律事務所までご相談ください。

相続税申告における損害賠償請求の類型

 相続税申告に関する損害賠償請求の事案には,相続税を過大申告した場合と,過少申告した場合があります。
 場合により,請求の相手方と補填される損害が異なるため,誰に,どのような損害を,どのようにして請求するのか,丁寧に検討する必要があります。

(1)相続税を過大に納めてしまった場合

①更正の請求(還付請求)
 税理士が相続税の申告で何らかのミスをおかし,相続税を過大に納付してしまうケースがあります。そのような場合,相続税の申告期限から5年以内であれば,基本的には,過大に納付した金額を還付請求することができます(更正の請求)。
 ※相続税の還付請求は,弁護士へ依頼するのが効率的です。
  弁護士による相続税の還付請求についてはこちら

②税理士損害賠償請求
 もっとも,更正の請求によっても還付されない場合があります。更正の請求期間を過ぎてしまった場合や,小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減措置等の特例などの申請を失念した場合には,更正の請求が行えず,過大納付金が返ってこないことがあります。そのような場合には,税理士に対して過大納付金額を損害賠償請求する方法があります。
 また,税理士による不適切・不十分な説明により,不適当な遺産分割や節税対策を行い,結果として相続税を多く支払わざるを得なくなった場合には,説明義務違反として,税理士に対する損害賠償請求を行うことが可能です。
 なお,このような過大納付事案で,税理士が税理士賠償保険に加入している場合には,保険金が支払われる可能性があり,金銭の回収可能性も高くなります。

③不服審査申立や行政訴訟
 更正の請求を行っても,国税庁が独自の見解に基づいて還付請求を認めないケースもあります。そのような場合には,国税庁に対する不服審査申立や行政訴訟を提起することも可能です。

(2)相続税を過少申告してしまい,過少申告加算税や延滞税,重加算税を課されてしまった場合

 税理士が何らかのミスで相続税を過少申告してしまい,税務調査等で過少申告が判明した場合には,納税者本人に,①本来納めるべき納税額の不足分のほか,②納付期限から実際の納付までの期間にわたる延滞税,③過少申告加算税,④さらに,納税者が税額の計算の基礎となる事実を仮装・隠ぺいし、これに基づいて納税申告書を提出していたときには,重加算税が課される場合があります。
 相続財産が高額な場合,延滞税および重加算税も高額となります。これらの延滞税,過少申告加算税,重加算税等の負担が税理士のミスに起因する場合には,税理士に対する損害賠償請求を行うことが可能です。
  また,加算税そのものに不服がある場合には,国税庁に対して不服審査申立や行政訴訟を行うことも可能です。

 相続税申告における、よくある税理士の事故原因についてはこちらをご覧ください。