名義株と相続

株式の相続でよく問題となる、名義株についてご説明します。

名義株とはなにか

 株主が、自分の妻(配偶者)や子供名義で株式を取得し、「名義株」が生じることがよくあります。
 「名義株」とは,他人の名義を借用して株式を引き受け、対価の払い込みを行った株式のことで,株主名簿に記載された株式の所有者と、実際の株式の所有者が合致しない株式をいいます。
 なぜこのようなことをするのかというと、全ての株式を自己名義で保有していると、自分が死亡し、相続人(配偶者や子供ら)が株式を相続する際に、多額の相続税がかかってしまうからです。つまり、初めから自分の相続人が株式を取得したことにしていれば、自分が死亡しても株式の相続は生じず、相続税がかからないので、相続人にとって利益になるわけです。
 しかしながら、この相続税対策としての名義株は、以下のような問題を生じさせるおそれがあります。

(1)税金の問題

 このような相続税を免れるための名義株は、いわゆる脱税行為にあたります。したがって、課税庁(税務署等)に見つかると、相続財産の無申告ないし過少申告として過少申告加算税が課せられます。さらに悪質な場合には、重加算税が課されることもあります。
 その際、課税庁と相続人との間で、株式が本当に名義株であるのか否かが争われることがあります。なぜなら、名義株であるか否かは一概には判断が難しく、被相続人が生前、相続人に対して株式を贈与する場合などでは名義株に当たらないからです。
 課税庁と相続人との間で名義株の存否が争われる場合、最終的には訴訟に持ち込まれます。

(2)相続人間で生じる問題

 さらに、相続人が複数名いる場合には、相続人間でも争いが生じることがあります。
 たとえば、被相続人XにA,B,C3人の相続人がおり、被相続人Xが相続人A名義で株式を所有し、これが名義株である場合を考えてみます。 この株式は、確かに名義はAですが、実際のところは、Xが当該株式の出資を行い、配当を受け取り、株式の管理を行っていたので、真実の株式の所有者はXです。したがって、Xが死亡した場合、当該A名義の株式は、相続人A,B,C3人の共有財産となるはずです。よって本来であれば、ABCの3人で遺産分割協議を行い、当該株式を誰が相続するのかを相談して決め、決定された通りに株主名簿を書き換えることになります。
 しかしAとしては、「自己名義の株式なのだから、これはそもそも自分の株式であって、相続財産の対象とはならない。Xは自分のために出資し、自分にこの株式を贈与してくれたものだ。」と考え、BやCとの遺産分割協議に応じない可能性があります。仮にXが会社の経営者であり、大株主であったとしたら、相続人ABCの間で熾烈な経営権争いが生じかねません。Aの主張が認められれば、株式の保有数で有利に立つAが、会社の意思決定を牛耳ることが可能となるからです。
 このような場合、BとCはAに対して、A名義の株式が名義株であり相続財産の対象となることを主張し、Aを説得しなければなりません。Aが説得に応じない場合には、Aや会社を被告として訴訟を提起することになります。
 以上のとおり、名義株の相続の場面では多様な法律問題が生じます。現在、名義株を保有している株主の方は、紛争が顕在化する前に一度、弁護士までご相談ください。また、実際に相続が生じて名義株の存在が明らかになった方、現に紛争が生じてお困りの方は、早急なご相談をお勧めいたします。
 名義株について、詳しくは以下のサイトもご覧ください。