相続税の還付請求

更正の請求(還付請求)とは?

 相続税を過大に納め過ぎた場合,税務当局に対して納め過ぎた金額を返すように請求することができます。これを「更正の請求」といいます。
 更正の請求には,①当初の申告書に記載した課税価格又は税額に誤りがあり過大に納付してしまった場合と,②申告期限後の後発的事情(訴訟の判決等による相続税額の変更等)により納付した税額が過大になった場合とがあります。
 ①の場合には,申告書の誤りを調査し,更正の請求をする理由,経緯を説明し,更正の請求の理由の基礎となる事実を証明する書類等を提出する必要があります。
 ②の場合には,後発的事情の発生(判決等)を示す必要があります。

 

Q 税理士ではなくて,弁護士でも更正の請求ができるのでしょうか?

 相続税の更正の請求については,税理士業務の一環とされていますが,弁護士は税理士業務を兼務することができるため,弁護士も更正の請求が可能です(税理士法51条1項では,「弁護士は,所属弁護士会を経て,国税局長に通知することにより,その国税局の管轄区域内において,随時,税理士業務を行うことができる。」と定められています)。

 

Q 更正の請求を弁護士に依頼するメリットはなんですか?

 ✔ 更正の請求では戻ってこない場合にも対応できる

 更正の請求によっても過大納付額が還付されない場合があります。更正の請求期間を過ぎてしまった場合や,小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減措置等の特例などの申請を失念した場合には,更正の請求が行えず,過大納付金が返ってこないことがあります。そのような場合には,弁護士が依頼者の代理人として,税理士に対して過大納付金額を損害賠償請求することができます。このような損害賠償請求は,税理士は代理することができません。
 また,税理士による不適切・不十分な説明により,不適当な遺産分割や節税対策を行い,結果として相続税を多く支払わざる得なくなった場合には,説明義務違反として,税理士に対する損害賠償請求を行うことが可能です。このような損害賠償請求は,税理士は代理することができません。
 また,稀なケースですが,更正の請求を行っても,国税庁が独自の見解に基づいて還付請求を認めないケースもあります。そのような場合には,国税庁に対する不服審査申立や行政訴訟を提起することも可能です。
 弁護士が更正の請求から関与した場合,当初より回収の見通しを立て,更正の請求と税理士が代理できない損害賠償請求の交渉や訴訟提起の準備を同時並行にスムーズに進めることが可能となります。訴訟を後ろ盾とした交渉は弁護士ならではの有効な紛争解決手段です。
 また,対税理士訴訟,行政訴訟,他の相続人に対する訴訟などの法的手段を複合的に組み合わせることで,更正の請求単独で行うよりも多くの金銭補填が可能となる場合もあります。
 なお,過大納付事案で,税理士が税理士賠償保険に加入している場合には,保険金が支払われる可能性があり,金銭の回収可能性も高くなります。

 ✔ 遺産分割や遺言等,相続に関連した法的問題も一体的に解決することができる

 相続税は遺産分割協議の内容と深く関連しており,相続人間の紛争解決がポイントとなるケースが多くあります。弁護士であれば,相続人間の紛争解決と相続税の調整を一体的・効率的に行うことができます。必要に応じて,相続人間の調停や訴訟についても代理することができます。
 また,税理士が不適切な遺産分割協議等に関与し,結果として何らかの損害が発生した場合には,税理士に対して賠償請求することが可能となる場合があります。

 ✔  法律の専門家だからこその視点を生かせる

 相続税の申告で最も多いミスは,細かい法令や通達の適用を見逃していたケースです。相続財産,特に不動産は個性が強く,幅広い多種多様な関係法令を検討しなければなりません。弁護士は法令の専門家であり,細かい関係法令の適用・解釈に精通しています。法律の専門家の視点で,申告をいま一度,網羅的に再検討します。

 

Q 過少申告による延滞税・重加算税についても対応できますか?

 弁護士が関与する場合, 過大納付事案の更正の請求だけではなく,過少申告による延滞税・重加算税についても,対税理士訴訟を通じて金銭の請求が可能となる場合があります。

 

Q 弁護士であれば誰でも税務の相談に乗ってもらえますか?

 弁護士にご相談する場合には,相続税務に詳しい弁護士に依頼することが肝心です。弁護士の業務範囲は非常に広く,もともと税務に精通した弁護士は多くないため,相続税務に詳しい弁護士に相談することが必要です。
 当事務所は税務申告業務も行い,相続税務に精通した法律事務所です。お気軽にお問い合わせください。